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冬の対策

暑い夏がやっと終わりを告げ行楽のシーズン秋がやってくる。観光のシーズンだぞと毎年こんな風に
浮かれていられればいいのだが。東日本の宿泊関係の皆さんは、今年は春先から大変でした。
大地震に加えて福島原発の事故を受け風評被害の対策や節電対策にと追われる日々が続き、夏が
終わったら、もう冬の節電、省エネ対策を講じなくてはならない。ほっと一息入れる暇も無い状況です。
でも冬の対策を講じると講じないでは経営に大きな違いがでてきます。

 


冬の省エネ対策といえば熱の有効利用です。熱といって思い浮かぶのは温泉や暖房や光です。
温泉といえば掛け流しとばかりに温泉を湯口から大量に掛け流し廃湯しているところを見かけますが、
温めた熱をただ捨てているなんてことになっていませんか。暖かい温泉が対流し、浴槽の冷めた
お湯が廃湯されるようになっていますか。温度の低い温泉を加温している施設では熱量の損失は
大きな経費の損失でもあります。


露天風呂になると外気温や風の影響を受け、熱のロスはもっと大きくなります。効率的な運用をするためには、
掛け流しと循環の併用をする方法があります。循環保温により捨てる熱量を少なくすることができます。
同様に浴槽の近くにボイラーや循環器を設置することで効率を高めることができます。浴槽と熱機器をつなぐ
循環や保温の配管に距離があると熱のロスが大きくなるからです。露天風呂の場合は、使用しない時間帯に
浴槽に蓋をして風に放射熱を奪われないようにすることも大切です。熱の有効利用を考えるという点で浴場の
システムを見直してみてはいかがですか。温泉が余っているところはもちろんですが、廃湯の多いところ、
熱量があるところは熱交換器やヒートポンプを利用して廃熱の有効利用をすることも考えられます。
設備に掛かるコストが5年以内に回収できるのであれば検討してみる価値はあります。

 


次に暖房ですが、旅館やホテルでは、一般にお客様が使用するときしか使わない場所と常に暖房を必要
とする場所があります。前者は客室、宴会場、会議室などの個室スペースで後者はロビーラウンジ、大浴場、
などのパブリックスペースや厨房、事務所などのバックスペースです。熱量の無駄遣いをしないよう暖房の
系統を使い勝手によって切り分けられる、入り切りができること、システムも分散型や集中型を使い分ける
ことが大切です。お客様が直接使用する客室のような個室スペースは分散型にして使用する部屋ごとに起動
できるようにすることで不要なエネルギーを使わないようにします。


お客の有無(収入の有無)に係わらず基本暖房がいる場所は、効率の良い暖房システムや建築的な保温を
取り入れることが必要です。暖房の熱は上にあがります。どの位置から噴出しているのか人間に暖房が
届いているのか、天井の高い空間では人がいないところを暖めている可能性もあります。発熱体を使った
床暖のような補助の暖房の取り入れた方が効率的なことがあります。建築的には、保温のために床や壁に
断熱材を入れ、視覚的にも有効な暖炉を設置することやサッシの内側にインナーサッシなどを取り付ける
ことで暖房効果をあげることができます。

 


最後に光についてですが、面白いブラインドがあるので紹介をします。ブラインドの機能は通常遮光をするのが
目的ですが、このブラインドは、一部に差し込んでいる光を偏光して室内を明るくすることができるのです。
一部の明るさを全体に広げることで照明の点灯を削減し、かなりの節電になります。事務所などでは削減率80%
という数値もあるようです。和紙のタイプもあるようなので客室やロビーなどにも使えるのではないでしょうか。
熱が逃げないように保温をはかりながらの節電も考えらます。


温泉にしろ、暖房にしろ、光にしろ、効率的なエネルギーの使い方が節電や省エネに繋がります。
冬が来る前にもう一度、身近なエネルギーを無駄にしていないか、熱を捨てていないか点検することで
エコを考えてみませんか。

 

 

東日本営業部建装専任部長 中安敏雄

多くのホテル・旅館では、職種別採用を行っている実態がある。施設内のさまざまな職種を体験して、
適正を理解したうえで配属が決まるということは少ない。
例えば、客室係として採用されると原則的には客室係として仕事を続けることになる。宿泊施設に
就職したというよりは、客室係に就職したと言える。フロント係はフロント、電話対応、売店や
ラウンジも見ることになるが、その業務範囲はある程度限られている。
時には、料理からフロントへというような人事異動もあるようだが、稀有なケースと言える。


巷では失業率が高い状態が続いているが、多くのホテル・旅館では人材確保に苦労していることも現実である。
また同時に東日本大震災や経済低迷による売り上げ減少を補うため、省エネは当然のことで、さらに人件費に
メスを入れている施設も多い。一方で、就業時間短縮の動きは社会的に進展しており、これから労働力が
増えるような状況にはない。


このような状況では、施設内で少ない人材を効率的に稼動させる必要がある。それは、今まで無駄な
時間があったということではなく、今まで以上の効率化を迫られており、より少ない人員でより多くの
作業を行わなければならないということだ。そのためには、1人ひとりが数役をこなすホテル・旅館の
マルチタスク化が必然となってくる。


この時に正対しなければならないのが、お客さまであり、すなわち、この点がお客さま第一主義である。
お客さまの動きに合わせて人員配置をすることで、お客さま満足度が高まり、ひいては効率的な業務の
推進が可能となる。


お客さまが動く時、例えばチェックイン・アウト、夕食時間帯、朝食時間帯などには比較的繁閑の波動が
生じることが多い。その業務波動に応じて、いかに少人数で臨機応変な対応をし、その結果、お客さま満足度が
上がるような人員配置を行うことができるかがポイントとなる。


さらに言えば、その人員配置をコントロールする人材も必要となってくる。コントローラーは全体を見渡しながら、
人を動かさなければならない。このコントローラーの存在は、同時に若手スタッフにとっては、いつまでも同じ
仕事ばかりではないという緊張感ととともに目標感を持ったモチベーションアップにつながる。


基本は、お客さまであり、その満足度の向上にある。そして、また来たいと思わせることでリピーター化し、
さらに顧客化することで施設の維持、向上に多大な成果をもたらすこととなることを忘れてならない。

 

 


(観光経済新聞2011年7月16日掲載)

企画設計室 土屋 武志

長期予報(3カ月)によると今年の夏は関東、甲信以西の地域で、平年並みかやや高く、東北、北海道では
平年並みかやや低い気温であるとの予想である。
大手企業や一部の官公庁では、夏休みの長期化と土・日曜日から平日へ休日変更、冷房温度の高め設定
に加え、早い時間の出勤、退社による涼しい時間帯での活動など従来の慣行をいろいろな調整や工夫により
変更し、電力需要のピークの分散化を図ると共に、暑い夏を乗り切る手立てとする予定のようである。


こうした動きをにらみ旅行会社の店頭には、被災地支援型の旅行商品とともに夏休みの長期滞在型商品や
親子での体験型宿泊商品、連泊型商品の案内が並び始めた。今年の夏は暑い都会から出て、自然の風が
爽やかな山や海や温泉でゆっくり過ごしては、ということであろう。電力の最大需要期である夏の旅行は、
都市部での電力消費を押し下げるし、被災地域への旅行は、復興や景気回復支援といった効果も期待できる。


世情を被うニュースが暗くなりがちの中、自分たちの所得が伸び悩んでいても年に1回くらいは旅行に行きたいし、
まして何らかの社会貢献につながるのであればといった理由に後押しされて、今年のゴールデンウイークは
予想以上の旅行者数であったとのことである(観光庁発表では国内宿泊旅行人数ベースで対前年3・2%減)。
旅行各社は夏の旅行にも、こうした消費者の動きに期待しているのであろう。


さて、最近ある宿泊施設の経営者から、今回の震災、原発事故を契機に宿泊施設の経営環境は大きく変わり、
従来からの経営のやり方では通用しない時代になってしまうとの意見を聞いた。曰く「時代の変化に確実に
対応できない経営ではもたない」。曰く「同じ地域の他施設との違いがはっきりと分からないサービスと運営では
とても続かない」。


今回の震災や原発事故による一時的な旅行マインドの冷え込みや不景気など需要量の縮小があるがゆえに、
どの商品でも売れればいいという総花的でさして工夫のない商品による単純な売上主義はもはや通用しない。
どの商品をどのお客さまにいくらで売ってどれだけの利益を残すかを明確にして、全体での収益を確保できる
綿密な計画・立案と実行が必要であり、当然、その計画は、経営者のビジョン達成に向けたガイドラインを
ベースに作られるものでなければならない。


昨日の延長線上にあった営業や運営で良かった経営から、実践的なノウハウやスキルに裏打ちされた経営に
転換しなければ生き延びてゆけないという厳しい話であると理解している。

 

 


(観光経済新聞2011年7月9日掲載)

企画設計室 永池 英治